『私に栄誉を!』 -中国映画-
黄建新監督2005年製作の中国映画。黄建新は『王さんの憂鬱な秋』『黒砲事件』など、微妙な人間関係から来るトラブルや含蓄を描いた作品が多く、問題提起的。その映画の後味は複雑で、常に考えさせれる。本作品も例外ではない。
ある日、南京の新聞社に「善行をしたから新聞で表象して欲しい」とやってきた男がいた。新聞記者の古国歌は彼、楊紅旗に関心を持ち、話を聞くと2月14日の晩、女子大生がレイプされかかったのを助けたのだという。古記者が客観的にそういった行為があったと証明できなければ新聞に載せられないというと、連日の様にしつこく新聞社にやってきては、助けたのは事実だ、新聞に載せてくれとせがむ。
そこで裏付けを取ろうと、彼が助けたという女子大生欧陽花に会ってみると、そんな事実はないと言う。さらに裏付けを取ろうと、彼の住む村に行ってみると、末期癌で寝たきりとなった彼の父親がおり、部屋は表彰状で埋め尽くされていた。彼の父親がなぜ治療もろくに受けず放置されているのか疑問に思い、村の書記長に会ってみると、彼は模範労働者で何度も表象されており、村が支給するお金も他に寄付してしまうのだという。
新聞社に戻ると、大喜びで楊紅旗がやってきていよいよ新聞に載せてくれるのかと挨拶に来た。古記者が否定すると、大いに憤慨して載せる気もないのになぜ父親に会いに行ったのかとなじる。事情を聞くと、父親は息子が正直に生きてきたことは嬉しいが、一度も表象されたことがないのが残念だ。一度でいいから死ぬ前に表象されるのを見たいという。また、かつて父の写真を新聞に載せたのが編集長であることも判明した。
しかし、あちこちに証拠を探しに聞き込みに行っても、楊紅旗を欧陽花に直接会わせても真相は解明されず、そうこうするうちに父親が亡くなってしまう。葬儀に言った古記者に何しに来たのかとなじる楊。
ところが意外なところから事実が判明する。連続強姦殺人魔が逮捕され、彼の自白により楊の証言が事実であることが確認されたのだ。遅ればせながら楊を功績を称えた記事が新聞に載るのだが、そのことが意外な波紋を拡げてしまう...
この映画はいくつかの深刻な問題を提起する。一つは女性のレイプ被害者が深刻な偏見に曝されるという事実。そしてそのことから派生する、何を正義とすべきなのかというダブルバインド状況。楊親子を表象すれば、女子大生がレイプされたという事実が公になり、彼女の一生は台無しになってしまう。かといって彼女のプライバシーを守ろうとすれば楊親子に犠牲を強いることになる。そのダブルバインドに挟まれた挙げ句、楊紅旗の父親も落胆したまま死なせ、かつ彼女の人生もめちゃめちゃになるという最悪の結果を招くことになった。
そして善行は顕彰されなければ誰にも評価されないという現実...ただ、正直に生きていくということだけでは世の中から評価されてもらえないという状況...この映画が突きつけるものは非常に重い。
主演の古記者に『北京バイオリン』の王志文、楊紅旗に中国の人気コメディアン范偉、欧陽花に『山の郵便配達』でヒロインを務めた陳好、古記者の妻の婦人警官に苗圃、相棒に『一半海水 一半火焔』 で主演を務めた廖凡。
DVDは中国盤と香港盤が出ている。以下香港盤のデータ。なお香港盤はアナモルフィック収録。テレシネは多少甘めだが、中国映画の一般的なテレシネに比較してかなり良好な方である。なおDVDのジャケットに馮小剛プロデュースと、監督名より大きく出ているが、私に言わせれば黄建新の方が大物でしょ...と言いたいところだ。
なお本作品は2006年中国映画祭で国内上映された様だ。
原題『求求你表揚我』英題『Gimme Kudos』監督:黄建新
2005年中国映画
DVD(香港版)情報
販売: Mega Star Video 画面: NTSC/16:9 音声: Dolby2 北京語 本編: 99分
リージョン: ALL 字幕: 中/英(On/Off可) 片面一層 2005年11月発行 希望価格