yohnishi’s blog continued

webry blog から引っ越してきたブログです

2009-05-01から1ヶ月間の記事一覧

保守化するアルジェリア社会を批判する映画『ビバ・アルジェリア』

2004年製作アルジェリア映画。監督のナディール・モクネシュはアルジェリアのアルモドヴァルの異名で知られているそうだ。確かにアルモドヴァルの作風に似ていなくもない。 2003年冬。原理主義とテロリズムが忍び寄る首都アルジェの中心街。そこのマンション…

中国十大禁片の1本 『郵差(Postman)』

先日「中国十大禁片」とされる中国映画を紹介したが、この10大問題作のうち日本で見ることが最も困難な映画が本作品。10大問題作のうち本作以外は少なくとも映画祭での公開は行われている。しかし本作品は全く日本で上映されたこともビデオが出たこともない…

中国の児童映画 『上学路上 -学校へ行きたい-』

地方の教育の困難地域における子供たちを題材にした中国の児童映画。香港の金鶏賞で最優秀児童映画賞、脚本賞、新人監督賞を受賞、更にルーカス国際児童映画祭(ドイツ)で最優秀賞等、数々の国際児童映画賞を取った作品。 13歳の小燕は学校に通っている。夏休…

自主映画作家チョン・スイルの『犬とオオカミの間の時間』

『鳥は閉曲線を描く』『黒い土の少女』等の自主映画で知られるチョン・スイル監督の作品。本作は日本でも劇場公開された『黒い土の少女』の1作前の作品。映画製作に行き詰まった映画監督、北に残してきた家族との再会を夢見る家族、幼いときに生き別れた妹…

『九降風』の香港版、『列日當空 (High Noon)』

エリック・ツァン、プロデュースの『九月に降る風(九降風)』台湾、香港、中国三部作のうち、第2作にあたる香港バージョンの『列日當(当)空』のDVDがリリースされている。香港版も7人の高校生17歳の悪ガキグループの友情と裏切りがテーマになっているのは『…

モザンビーク発フェミニスト映画『他人の庭 (Another Man's Garden)』

2006年製作のモザンビーク映画『他人の庭』。現代アフリカの若い女性が社会的上昇を目指して頑張ろうとすると、どのような社会的障壁、不条理が待ち受けているのかを描く作品。ちなみにモザンビークはアフリカ南東部、南アフリカのすぐ北側海岸沿いに位置す…

許鞍華(アン・ホイ)監督の自伝的映画『客途秋恨』

1990年に製作された日中混血の許鞍華監督の自伝的映画。日本人である母親との確執と理解・和解を描いた作品。異文化理解の困難さについて非常に深い洞察力を持って描かれた作品であり、異文化理解に関心のある方やあるいは外国へ行って暮らしてみたいと考え…

オムロンソフトウェア 楽々シリーズ終息

オムロンソフトウェアの「楽々韓国語」を、電子版の小学館朝鮮語辞典を使いたいがために購入していたのであるが、先日「楽々シリーズ」サポートの終了のお知らせが... 高電社の「Korean Writer」への優待乗り換えの案内が入っていたが、そもそも「Korean Wri…

韓国の「大島渚」、チャン・ソヌ監督の『競馬場へ行く道』

『つぼみ』『バッド・ムービー』『LIES』『リザレクション』等で日本でも知られる、一作ごとに作品傾向が全然異なる、韓国の「大島渚」1)、チャン・ソヌ監督の1991年作品。日本では未公開と思われるが、韓国では様々な論議を引き起こした作品2)。退廃的な知…

矛盾する台湾を地で行く 映画『さよなら、再見』

台湾は親日なのか反日なのか、議論かまびすしいところであるが、筆者に言わせれば親日か反日かというカテゴリー分けが、そもそもの間違い。そのような複雑な台湾事情理解のための映画3作(私はこれを「台湾理解3部作」と勝手に命名しているが)は、『悲情城…

エラン・リクリス監督1992年の話題作『カップ・ファイナル』

この作品も日本でよく知られていない素晴らしい映画作品。先日岩波ホールで公開された『シリアの花嫁』のエラン・リクリス監督が1991年に製作(公開は1992年)した作品で、世界的に評判になったが、国内での上映は1994年のイスラエル映画祭で上映されたのみ。…

アルジェリア映画『ケルトゥームの娘』

フランス在住のメーディ・シャレフ監督が自分の故郷であるアルジェリアの砂漠地帯で撮影した作品。 19歳のスイスの女性がアルジェリアの砂漠地帯にバスで降り立った。彼女の名前はラリア。実は彼女はこの地が生まれ故郷で、赤ん坊の頃スイスの養親に貰われて…

現代的テーマに意欲的に取り組む韓国自主映画『貯水池から救われたチーター』

2007年公開の韓国自主製作映画。いじめや引きこもり、ネット社会を題材にしたという点で、日本社会にも共通する現代的テーマを扱った意欲作。土浦や秋葉原の無差別殺人などのバックグラウンドにある心理世界に通じる部分を扱っていると言えそうだ。 映画の主…

姉の映画より視点が鋭い - 『ハナのアフガンノート』

元々は、先に紹介したマフマルバフ一家の姉サミラが撮った『午後の五時』のメーキングビデオとして企画された、妹のハナ・マフマルバフが撮った作品。本作品も日本では東京テアトルで配給され『午後の五時』と同時に公開されたが、やはり日本ではソフト化さ…

アメリカ製作セミドキュメンタリー映画『Nanking』

最近、独仏中合作で製作された南京のシンドラーとも言われる人物を描いた『ジョン・ラーベ』が日本で公開されないことが話題になっている。本作品もジョン・ラーベら1937年南京事件の際、中国人保護にあたったジョン・ラーベをはじめとする欧米人の活躍に焦…

映画表現と国家

最近読んだ末延芳晴(2008)「森鴎外と日清・日露戦争」平凡社よりちょっと長くなるが引用してみよう(原著pp. 352-353) 中村光男は『風俗小説論』(河出書房, 1950)の「近代リアリズムの発生」で夏目漱石が『我が輩は猫である』を「ホトトギス」に連載した明治3…

韓国の農村での印象的な一夏...韓国映画『ボリウルの夏』

ブータン映画(ロケ場所はインド)で、自身もチベット仏教の高僧であるケンツェ・ノルブ監督の『カップ -夢のアンテナ-』という、チベット仏教の少年僧たちとサッカーという意外な組み合わせでミニシアター系映画の中でスマッシュヒットを記録した映画があった…

パレスチナ戦禍の状況を生々しく描く『戦禍の下で』

とにかくぜひ見てほしいと強力に推薦したいのが本作品『戦禍の下で(英題: Under the bombs)』。2006年8月のイスラエルによるレバノン南部空爆後、行方不明になった息子を探す母を通しパレスチナの戦禍を描く作品。 あらすじ自体は比較的単純だ。ドバイからゼ…