yohnishi’s blog continued

webry blog から引っ越してきたブログです

アラブ

『678』 - 性暴力に立ち向かう女性たちを描いたエジプト映画

セクシャル・ハラスメント問題を初めて本格的に扱ったエジプト映画として、エジプト中の話題をさらった作品。エジプト公開2年を経過して、欧米でも徐々に知られるようになった。海外では『Cairo 678(カイロ678、英題)』、『les Femmes du Bus678(678番バスの…

『花嫁たちの歌 (The Wedding Song)』 - 視線の良さが光るフランス=チュニジア映画

第2次大戦中、ナチ占領時代のチュニジアを舞台に、引きされていくユダヤ人とアラブ人少女の友情を描いた作品。個人的には大特薦作品。我々日本人が全く気づいていなかった様々な視点を提供してくれる。 時は1942年、チュニジアのチュニス。ユダヤ人のミリア…

エジプトのフェミニスト映画 『話して、シェヘラザード (カイロの女たち)』

エジプト映画『ヤコービアン・ビルディング』を脚色した脚本家、ワヒド・ハミッドWahid Hamid(『ヤコービアン・ビルディング』の監督、マルワン・ハミッドの父)によるシナリオによって撮られた作品。夫の出世のため、自分がキャスターを務めるTV番組を、女性…

1975年レバノン内戦を生活者の視点で描く 映画『西ベイルート』

『Lila dit ça(リラは語る)』のジアド・ドウエイリ監督の長編デビュー作品。1975年のレバノン内戦の模様を西ベイルートに暮らす少年の目=生活者の視点から描いた作品。 タレク(Rami Doueiri)は、イスラム教徒の住む西ベイルートに住み、教育熱心な両親の方…

画質がExcelent!! - フランス盤『ヤコビアン・ビルディング』DVD

以前本ブログで取り上げたエジプト映画の傑作『ヤコビアン・ビルディング』 (http://yohnishi.at.webry.info/200906/article_5.html)。その内容のすばらしさに感服したものの、エジプト盤DVDはレターボックスと画質的に不満。どこかに高画質のものがないかと…

Web備忘録 - 今更ながら「米帝」

アラブ首長国連邦に在住のハムダなおこさんのメールマガジン「アラブからこんにちは」。 この中に、次のような記述があった(2010.12.26付け)。 -------------------------------------------------- 現在サウジとされているこの地域は、実は、ついこの前まで…

アラブ系青年とフランス人女性の奇妙なロマンスを描く『Lila dit ca (リラは語る)』

フランスを拠点に活躍するレバノン人映画監督、ジアド・ドゥエイリ(Ziad Doueiri)の2004年映画作品。内気なアラブ系青年と奔放で美しいヨーロッパ系フランス人の女の子との間のロマンスを描くと共に、アラブ系フランス人のフランス社会に対する疎外感をアラ…

50年ぶりに作られたヨルダンの長編劇映画『キャプテン・アブ・ラーイド』

ヨルダン出身のアミン・マタルカ監督の長編デビュー映画。ヨルダンの首都アンマンを舞台に、子供たちからパイロットと間違えられてから、周囲の子供たちと交流を持つようになった老人が、子供たちを取り巻く厳しい環境に対して手をさしのべるようになる過程…

チュニジア発、ベリーダンサーを描くフェミニスト映画『Satin Rouge (サテン・ルージュ)』

チュニジアはアラブ世界でも比較的治安が安定し、ヨーロッパにとってアラブ随一のリゾート国として知られている。フェミニズムは、アラブ世界で、アラブの伝統的価値観を破壊する西洋かぶれの思想として排撃される傾向にある様だが、治安の安定しているチュ…

交錯する愛の皮肉を描くフランス映画『クスクス粒の秘密』

マグレブ系移民家族を描いた2007年製作のフランス映画。 スリマーヌ(ハビブ・ブハール)は南仏の漁港セトにあるドックに勤める、フランス国籍を取得したマグレブ系移民。今年勤続35年だが仕事のスピードが遅いと上司に文句を言われた挙げ句、パートタイマーに…

70年学生運動世代のエジプト大学生を描く映画 『Al-Karnak (カフェ・カルナク)』

1975年度製作のエジプト映画。エジプトのノーベル賞作家、ナギーブ・マフフーズ(1911-2006)が1974年に発表した同名の小説を映画化したもの。ちょうどほぼ日本の全共闘時代に重なる、1967年第3次中東戦争から、1973年第4次中東戦争に至る時代の学生活動家とそ…

2005年 カイロ国際映画祭受賞作『自由を求める女たち』

本作品は家父長制社会からの自由を求めてアラブ世界を飛び出しフランス、パリにやってきた三人の女性を描く、女流監督の手によるエジプト映画。2005年第28回カイロ国際映画祭最優秀アラブ映画賞受賞作。また主人公三人の内一人を演じたサナ・ムジアーヌ(Sana…

山本薩男映画の再来!!エジプト社会派映画の傑作『ヤコビアン・ビルディング』

個人的に山本薩男監督の社会派映画(『華麗なる人々』『金環食』『不毛地帯』etc...)は大のお気に入りである。社会の表舞台にいる人々から、社会の裏街道を生きる人々や下層階層まで多様な人々を串刺しにした、複雑だが骨太で重厚なプロット... 山本薩男や小…

保守化するアルジェリア社会を批判する映画『ビバ・アルジェリア』

2004年製作アルジェリア映画。監督のナディール・モクネシュはアルジェリアのアルモドヴァルの異名で知られているそうだ。確かにアルモドヴァルの作風に似ていなくもない。 2003年冬。原理主義とテロリズムが忍び寄る首都アルジェの中心街。そこのマンション…

アルジェリア映画『ケルトゥームの娘』

フランス在住のメーディ・シャレフ監督が自分の故郷であるアルジェリアの砂漠地帯で撮影した作品。 19歳のスイスの女性がアルジェリアの砂漠地帯にバスで降り立った。彼女の名前はラリア。実は彼女はこの地が生まれ故郷で、赤ん坊の頃スイスの養親に貰われて…

フランスのアルジェリア移民文化摩擦を描く映画 『インシャラー・ディマンシュ』

先日紹介した『大いなる旅』と同様フランスとアラブの国との共同製作映画で、こちらはアルジェリア。アルジェリアのフランスからの独立後、1960年代のフランスは経済成長により足りなくなった労働力を補うため、外国となったアルジェリアを含む旧植民地であ…