台湾蘭嶼島の先住民の暮らしを描く『飛び魚を待ちながら(等待飛魚)』
2005年に製作された蘭嶼(ランユイ)島を舞台としたラブストーリー。監督は女性である曾文珍(ツェン・ウェンチェン)。日本では第18回TIFF(2005年)および2006年アジアフォーカス・福岡国際映画祭で上映されている。
ビフォンは調子のいい先住民タオ(ヤミ)族の青年。兄は本土に出て行ってしまい、高校生の妹と両親との4人暮らし。いつもノーヘルでバイクを運転しお巡りさんに怒られている。家は飛び魚漁師だが、漁の手伝いはそこそこに金を稼ぎたいと中古の自動車を買い込み「飛び魚一号」と命名してレンタカー業を始める。
そこへ携帯電話会社の依頼で、各社の電波状況調査に台北からやってきた晶晶(ジンジン)。ビフォンは半ば押し売りの様に彼女に車をレンタルし、島内の案内役を引き受ける。ところがある日彼女は財布を落としてしまい、お金、身分証までなくして身動きが取れなくなる。そこでホテル代が払えない彼女を自分の家に民泊させることにする。じつは丁度晶晶は台北にいる彼氏との関係が悪化してストレスを感じていたところであった。その彼女は南の島ののんびりしたビフォン一家との暮らしの中で段々心の傷が癒されるのを感じていた。その一方ビフォン自身は、現金がなくても暮らしていける島の暮らしに気楽さを感じつつも、本土の暮らしに対してあこがれる側面もあり、技術も学もなく本土に出かけたとしても大して稼いでいくことが出来ないであろう自分自身に対して劣等感も感じていた。そんな二人の距離は段々縮まっていったのだが....
この映画を見て気がついたのは台湾における蘭嶼島や先住民タオ族の暮らしの位置づけが、ちょうど日本における沖縄や沖縄の生活文化の位置づけとぴったり重なる点である。従って本作品は台湾版『ナビイの恋』『深呼吸の必要』といった位置づけになるのではないか。金稼ぎに忙しい台北の暮らしに比べて、魚を捕ったり、畑を耕すのんびりした生活が肯定的な価値観で語られる。とはいえ、現金収入の少ない島の暮らしは必ずしも天国ではなく、ビフォンはいかに現金を稼ぐか考えを巡らしているし、台湾本土に渡って掛ぎに行かないのも島の生活を肯定的に考えている訳では必ずしもなく、本土に渡ってあくせくした金稼ぎ生活していく自信がないからでもある。とはいえ現金収入がなくてもやっていける島の生活の気楽さを語ったりもして、気持ちは揺れている。
とはいえ先住民文化の認定が都市生活への忙しさや経済至上主義的な生活に対する疑問から来ていることが見て取れる。アイドル歌手を起用したラブストーリーに仕立てることで、先住民の生活に対する注目を集める意図で作られた映画であるといえよう。
ともあれ難しいことは考えなくても気楽なアイドル映画として見るのが正解だろう。
曾文珍は本作まではドキュメンタリー映画を継続して撮ってきており、本作が初の劇映画とのこと。主演俳優のビウン(王宏恩)は先住民出身の歌手だが、元々は山地のブヌン族の出身で、海洋民族のタオ族の出身ではない。また晶晶を演じたリンダは2002年にデビューしたアイドル歌手とのこと。
原題『等待飛魚』英題『Fishing Luck』監督:曾文珍
2005年台湾映画
DVD(台湾版)情報
販売: 聯成國事業有限公司 画面: NTSC/4:3(LB1:1.85) 音声: Dolby5.1 中国語(一部ヤミ語) 本編: 93分
リージョン3 字幕: 中/英 片面一層 2007年4月発行 希望価格NT$
※パッケージには16:9とあるが、これは台湾に良くある誤解でアナモルフィック収録ではない。
アジアフォーカス・福岡国際映画祭「飛び魚を待ちながら」
http://focus-on-asia.com/2006/fishing-luck.html
台北駐日経済中日文化代表処・「飛び魚を待ちながら」アジアフォーカス出展
http://www.taiwanembassy.org/ct.asp?xItem=46296&ctNode=3591&mp=202&nowPage=46&pagesize=50