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現存最古の、植民地下朝鮮トーキー映画 『迷夢』

画像 先日紹介した韓国映画資料院が刊行した『発掘された過去』第2弾より、現存最古の朝鮮トーキー映画『迷夢』を紹介する。この映画は中国の中国電影資料館(←長春映画撮影所←満映撮影所)で保管されていたのを映像資料院で2005年に韓国に複製して持ち帰った作品。

 作品自体は1936年、朝鮮映画株式会社京城撮影所で製作され、現存フィルムの上映時間は48分。監督はヤン・ジュナム(梁株南)で1912年ソウル生まれ。1932年に京城撮影所に入り、この作品が監督デビュー作品。彼は映画の様々な部門に携わったが主に編集技師として1960年代中頃まで活躍したそうだ。監督作品は1950年代までに5編ある。

 映画の内容は、1950年代の大ヒット作『自由夫人』を先取りするような内容。専業主婦として夫の「籠の鳥」になっていることに耐えられず出奔するというあらすじ。

 エスンは中産階級の主婦で娘もいる。しかしデパート一つ行くのに夫から細かく言われるのに腹を立て、私は「籠の鳥じゃない」と捨て台詞を残して家出してしまう。そのあげくチャンゴンと出会い、二人でホテル暮らしを続ける。ところが彼女は舞踊の公演で知った舞踊家に関心が移り、金持だと思っていたチャンゴンは、ふとしたきっかけで実はクリーニング屋の配達係だと知り、彼がホテル内で他の客室に入って強盗をしたのを知ったエスンは冷酷にも警察に通報してしまう。

 舞踊家がソウルを離れるらしいと聞いてタクシーに乗り、急ぎ京城駅に行こうとするエスン。しかしタクシーはエスンに急かされて途中で人をはねてしまう。タクシーがはねた人こそ彼女が置いていった娘ジョンヒだった。直ちにジョンヒを入院させると、娘のベッドの脇でエスンは毒をあおるのだった...

 この映画を見て分かるのは1930年代のソウルには既に消費文明が入り始め、デパート(原題の韓国語では「百貨店」だが当時は日本と同じように「デパート」と言っていたことが伺える)で買い物を楽しむ中産階級が既に存在しており、女の夫からの自立ということもテーマになっていたことが分かる。そういう意味では当時の朝鮮の社会意識を知る極めて貴重な資料。ただこの時代、最終的にそのような女の態度は懲罰の対象となってしまうのであるが...

 ただやはり演出面で今日の映画と比ぶべくもなく(これはフィルムの部分欠落のせいかもしれない)、フィルムの状態もあまり良くないので、今日の映画と同じレベルで楽しめるかというとその点は苦しい。やはり資料的価値で見る作品ということになる。

 韓国映像資料院としてはデジタル修復を試みた2番目の作品だそうで、付加映像にも修復前、修復後の比較影像が収録されており、相当スクラッチノイズや埃が修復されているのが分かる。しかしやはりオリジナルフィルムの状態がかなり悪いので修復後も音声面で聞き取りにくい部分、画像面でも見にくい部分は残る。また日本語の字幕は焼き付けられているが、フィルムの明るめの部分などでは読み取りにくい。英語や韓国語の字幕を参照しながら見ると良い。

原題『迷夢(미몽)』 監督: 양주남(梁株南)

1936年 日本(植民地下朝鮮)映画

DVD(韓国版)情報

『発掘された過去』第2弾

販売: テウォン・エンタテインメント 画面: NTSC/4:3(1:1.33) 音声: Dolby1 韓国語 本編: 分

リージョンALL 字幕: 韓/英 (プリント上に日本語字幕焼き込みあり)片面二層 2008年10月発行 希望価格W

『発掘された過去』第2弾 DVD紹介

http://yohnishi.at.webry.info/200810/article_14.html